
4月に始まった春ドラマは当初、目玉作品に欠けると指摘されたが、実際には味わい深い良作が多い。現時点でのベスト5を決めてみたい。選考したのはテレビ界の取材歴30年以上で、ドラマ賞や映画賞の審査員も経験した放送コラムニストの高堀冬彦氏だ。
*本記事にはネタバレが含まれます。
(放送コラムニスト:高堀冬彦)
『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ)
まず5位は『続・続・最後から二番目の恋』。2012年に第1作が制作されたロマンチックコメディ。今回は11年ぶりの3作目となる。
主演は小泉今日子(59)と中井貴一(59)。小泉は鎌倉市に住むテレビ局のドラマプロデューサー・吉野千明を演じ、中井は鎌倉市職員・長倉和平に扮している。この設定はずっと変わらない。

ただし、第1シリーズで45歳だった千明は59歳になり、定年まであと1年。強気一辺倒だった40代とは違い、焦燥感に駆られることもある。
第5回では会社に迎え入れることを条件に退職金を出資させる「出資詐欺」のターゲットにされる。千明は侮られたことが悔しかった。
和平も50歳から63歳になった。既に定年を過ぎ、現在は再任用の身。観光推進課で指導監というスタッフ職に就き、恬淡とした日々を送っている。

とはいえ、心穏やかではいられないこともある。たとえば、かつての部下で観光推進課課長の田所勉(松尾諭)から「長倉君」と呼ばれるときだ。そのたびにイラッとする。誰だって冷静ではいられないだろう。
千明も和平も人生の夕暮れどき。それでも胸ときめく季節まで終わったわけではない。千明は地元の開業医・成瀬千次(三浦友和)から好意を寄せられている。千明は成瀬の亡妻とうり二つだった。
和平は仕事を通じて知り合った通訳のアルバイト・早田律子(石田ひかり)に急接近される。律子も夫に先立たれている。
なにより、千明と和平はお互いにずっと気になる存在。ともに相手を大切にしている。まるで家族のような関係だ。それを今後も続けるのか、それとも答えを出すのか。
長期化するドラマは珍しくないが、大抵は登場人物の年齢が固定されている。出演者だけが年を取る。一方、このドラマは出演者と一緒に登場人物を加齢させた。それによって物語が単調化せず、膨らんだ。
底流にある人生は素晴らしいというメッセージは変わっていない。