官僚職を解かれた人はどこに行くのか?
中林:英語で「Revolving door」と呼ばれますが、回転ドア方式で、政権が代わり、役職を解かれてしまった上級官僚たちは、コンサルティング会社を立ち上げたり、シンクタンクに行ったり、民間企業に行ったりします。
アメリカには、こうした人たちが羽を休ませる小枝のようなところが数多くあります。日本のように同じ政党がずっと政権を維持することもアメリカではありません。常に政権が入れ替わるということは、外された人たちもまた戻れる可能性があることを意味します。
過去の政権での経験は非常に貴重で、それが強いキャリア上の武器になります。回転ドアで何度か政権入りした人は、高齢になると、企業のアドバイザーになることもあります。

議会に勤める国家公務員のことを「Congressional bureaucrat」(議会官僚)と言います。私もかつて補佐官という議会官僚でしたが、こうした仕事はそれほど給料がいいわけではありません。いわゆる普通の公務員の給料です。
ところが、こういう人たちがロビイストになると、給料はゼロが2つ多く付くこともあります。それが嫌になって、また公務員になったり、シンクタンクに行ったりする人もいます。
アメリカでは雇用の流動性が根付いていますから、能力さえあれば、さまざまなチャンスがあります。そして、大きな資産を持つ人たちは、手弁当で選挙活動を手伝って応援し、さらに多額の献金をすることで、存在を認められてある程度の政治指名職に就くということも普通に行われています。
中林美恵子(なかばやし・みえこ)
早稲田大学教授
1960年生まれ。埼玉県深谷市出身。大阪大学博士(国際公共政策)。米ワシントン州立大学修士(政治学)。1992年に米国永住権を取得。同年、米国家公務員として連邦議会上院予算委員会に正規採用され、上院予算委員会の共和党側に勤務(1993年1月-2002年4月)。約10年間、米国の財政・政治の中枢で予算編成の実務を担う。帰国後、独立行政法人・経済産業研究所研究員、跡見学園女子大学准教授、米ジョンズ・ホプキンス大学客員スカラー、中国人民大学招聘教授などを歴任。財務省・財政制度等審議会、文部科学省科学技術学術審議会等の公職、および衆議院議員(2009年-2012年)を経て、2013年に早稲田大学准教授。2017年に教授に就任。2018年より、米国マンスフィールド財団の名誉フェロー。2020年7月より凸版印刷株式会社(現TOPPANホールディングス株式会社)社外取締役。2025年4月から公益財団法人東京財団の理事長。
長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。