政治主導といわれる米国だが、どこまで政治主導なのだろうか(写真:ロイター/アフロ)

 日本では長らく官僚政治が問題視されてきた。財務省解体デモに見られるように、官僚に対する国民の不信感は強く、この国の政策や法案の中身を決めているのは政治家ではなく官僚だと言われる。

 それでは、大統領選が国民的な大イベントになるアメリカではどうなのか。『アメリカの今を知れば、日本と世界が見える 混迷が告げる時代大転換の予兆』(東京書籍)を上梓した早稲田大学教授の中林美恵子氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──アメリカでは、州政府の権限と連邦政府の権限が分かれていますが、州によっても州法が異なり、州ごとに支持政党やイデオロギー感覚も異なります。各州がそれぞれ異なる特徴や主張を持つことは、行政や法律の面では複雑で非効率にも見えます。

中林美恵子氏(以下、中林):アメリカは国土が広いですし、州が先にできて、それが集まって連邦政府になった国の成り立ちがあります。各州の性質の違いは、確かに現代社会から見ると非効率に見えますが、こうした国の成り立ちがあるがゆえに、今のアメリカの政治の現状があるということは重要なポイントです。

 各州がこのように個性を主張し合うことが、むしろアメリカの活力になっている側面もあります。州と州が競争したり対決したりする結果、活気が出てくるというか、さまざまな論争も熱を帯びるのです。予定調和的なところがないことが、アメリカ政治の特徴ではないでしょうか。

──将来的にカリフォルニア州あたりが独立するという可能性もあり得ると思いますか?

中林:私自身、そうした可能性をイメージしたことはなかったのですが、かつて上院の予算委員会で一緒に仕事をしていたテキサス州出身のある同僚は、当時から「テキサスはいつか独立するぞ」と真剣に語っていました。かなり衝撃を受けましたね。

 アメリカでは各州がものすごく自立心を持っていて、議員たちも「自分は州の代表として来ているのだから、州の要望を主張するのだ」という意識を強く持っています。そうした文化があるからこそ、アメリカの政治家たちは、意見の違いを乗り越えるためのさまざまな方法や思考も持ち合わせているのです。

──日本の場合は、国会議員は国会に出席することが重要だと考えられますが、アメリカでは、連邦議会議員が本会議場に座り続けていることは少ないと書かれています。