エヌビディアが台湾にAI戦略拠点とスパコン新設、GPUクラウド市場も創設 米中対立下で供給網強化
次世代コンピューティングの未来図提示、アジア技術の集積地で新たな布石
2025.6.10(火)
小久保 重信
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米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)はこのほど、台北市内で講演し、台湾におけるAI開発体制を大幅に強化する一連の計画を発表した。
台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)や台湾当局と協力し、最新鋭チップを用いたAIスーパーコンピューター(スパコン)を構築するほか、台北市内に新たな研究開発拠点を設ける。
同時に、自社のサーバープラットフォームを拡充・開放し、AI開発者や企業がより容易に高度なコンピューティング・リソースへアクセスできるクラウド市場も創設する。
世界的なAI技術競争が激化し、米中間の対立がサプライチェーン(供給網)に影響を及ぼす中、AIハブとしての台湾の重要性を強調し、市場での主導権を一層強化する狙いだ。
台湾にAIスパコンと新研究拠点「コンステレーション」
エヌビディアのジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)が明らかにした計画の中核は、台湾初となる巨大AIスパコンの構築だ。
これは世界最大の電子機器受託製造サービス(EMS)企業である鴻海や台湾・科学技術当局との共同プロジェクトである。鴻海の子会社がAIインフラを提供する。
エヌビディアの最新世代AIチップ「Blackwell(ブラックウェル)」を1万基使用し、台湾のテクノロジー・エコシステム(経済圏)全体の研究開発を加速させる。
エヌビディアの主要製造パートナーである台湾積体電路製造(TSMC)も、新たな半導体製造プロセスの研究開発にこのスパコンを活用する。
フアンCEOは台北市の北投区に新たな研究開発拠点「Constellation(コンステレーション)」を建設する計画も明らかにした。
「台湾は世界最大の電子機器製造地域であり、コンピューターエコシステムの中心。AIとロボティクスが生まれる震源地となるのは理にかなっている」(フアンCEO)とし、台湾の戦略的重要性を改めて強調した。
研究者や企業への支援体制を強化し、台湾をAI技術開発の世界的中心地の一つにするという。