エヌビディア、上海に研究開発拠点を計画 米規制下の中国市場で競争力維持狙う
AI半導体大手、輸出規制に対応しつつ現地ニーズ取り込みへ
米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)が、中国・上海に新たな研究開発(R&D)センターを設立する計画を進めていることが分かった。
米政府は先端AI半導体の対中輸出規制を強化している。こうした中、エヌビディアは世界最大級の市場の一つである中国で競争力を維持し、現地の顧客ニーズに対応する狙いだ。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)や米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が関係者の話として伝えた。
エヌビディアのジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)は2025年4月に上海市を訪問し、龔正市長と計画について協議した。
WSJによれば、市長は歓迎の意を表し支援を申し出たという。エヌビディアは米政権に対して承認を求めるロビー活動を行っているもようだ。
米政府の輸出規制強化でNVIDIAが戦略転換
この動きの背景には、米政府によるエヌビディア製高性能AIチップに対する輸出規制の段階的強化がある。
2022年以降、米政府は最先端AIチップの中国向け輸出にライセンスを義務付けた。これにより、エヌビディア中国事業の売上比率は大幅に低下した。
2025会計年度(2025年1月期)における同社売上高に占める中国市場の割合は13%と、規制前の26%から半減した。
このような状況下で、エヌビディアは上海R&Dセンターを通じて主に3つの目標達成を目指す。
第1に中国市場での競争力を維持し、第2に現地の顧客ニーズにきめ細かく対応、第3に中国国内の優秀なAI人材を確保し活用する。
中国では華為技術(ファーウェイ)など現地の競合企業が台頭しており、エヌビディアにとってプレゼンスの確保は喫緊の課題だ。
フアンCEOは中国市場が数年内に500億米ドル(約7兆3000億円)規模に成長するとみており、その重要性は増している。
同センターの重要な役割の一つは、中国顧客特有の要求や、米国の輸出規制を満たすための複雑な技術的要件を研究することだ。
その上で、規制に準拠しつつ競争力のある製品を設計する。加えて、獲得した人材は次世代の深層学習(ディープラーニング)技術やASIC(特定用途向け集積回路)設計といったグローバルな研究開発プロジェクトに投入する。
FTによれば、エヌビディアは既に上海で関連技術者の募集を始めている。