
米アマゾン・ドット・コムが、AIを活用して商品の特徴やレビューを音声で要約する新機能「Hear the highlights(ヒアー・ザ・ハイライト)」のテスト運用を米国内で開始したことが2025年5月下旬に明らかになった。
これは、同社が「あらゆる顧客体験をAIによって再発明する」と位置づけ、巨額の投資を続けるAI戦略の新たな一手と言える。
アンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)が4月上旬の株主宛書簡で「競争力維持に不可欠」と強調したAI分野への注力は、具体的なサービスを通じて消費者の購買行動に影響を与えようとしている。
AIが商品の「聞きどころ」を瞬時に解説
新機能のHear the highlights(見どころを聞く)は、アマゾンのショッピングアプリの商品詳細ページで利用できる。
ボタンをタップすると、AIが製品情報、カスタマーレビュー、インターネット上の関連情報を瞬時に分析・要約し、商品の主要ポイントを短い音声で解説する。
これにより、購入前の比較検討にかかる時間を大幅に短縮でき、多忙な中でも効率的に情報を収集できる。
特に、購入に際して慎重な検討が求められる商品カテゴリーでの効果が期待されている。
この機能の背景には、大規模言語モデル(LLM)をはじめとする先進的なAI技術が存在する。アマゾンは、「まるで知識豊富な友人が商品を解説してくれるような体験」の提供を目指すとしている。
CEOが語るAI投資の必然性、投資戦略と多岐にわたる活用事例
今回の新機能は、アマゾンが進めるAI戦略の具体例の一つだ。
ジャシーCEOは2025年4月上旬に公開した株主宛て書簡で、約1000億ドル(当時のレートで約15兆円)規模と報じられるAI分野への投資について、「あらゆる顧客体験がAIによって再発明されると信じるならば、AIに深く、そして広範に投資することになる」と述べ、AI投資が同社の使命である顧客体験の向上にとって必然であると強調した。
具体的には、AI向け半導体の確保やデータセンターの構築・増強といったインフラ投資の重要性を指摘し、「今、積極的に投資することが、我々の顧客、株主、そして事業のためになる」との考えを示した。
アマゾンは既に、AI技術を多岐にわたるショッピング機能に応用している。
例えば、生成AIを活用したショッピングアシスタント「Rufus(ルーファス)」は、様々な商品に関する質問に答え、顧客の買い物をサポートする。
製品リサーチツール「ショッピングガイド」は、100種類以上の製品タイプに関する動的なガイダンスや推奨を提供する。
このほか、顧客の興味や関心に合致する新商品を継続的に提案する「Interests(インタレスト)」、レビューの共通テーマを要約して製品評価を一目で把握しやすくする「レビューハイライト」、アマゾンが直接販売していない商品でも他の小売業者のウェブサイトから購入を支援する実験的な機能「Buy for Me(バイ・フォー・ミー)」など、顧客体験の様々な側面でAIが活用されている。