つまり、採択数の観点から見ても、アジア全体が成長しているわけではなく、主に中国と韓国の伸長が顕著である。一方で、日本、台湾、シンガポールの採択数は大きくは増加していない。
どこの国や地域の競争力が向上しているのか
ここまで、VLSIシンポジウムにおける投稿数および採択数の地域別推移を見てきた。投稿数の増加は、その地域における半導体研究者や技術者の裾野が広がっていることを示唆する。また、採択数の増加は、その地域の半導体分野における競争力の向上を意味している。
これらを踏まえると、ここ数年、研究者や技術者の数を増やし、競争力を着実に高めているのは韓国と中国であると言える。
一方、日本では、2021年にTSMCが熊本に進出することになり、2022年には国家プロジェクトとして新会社ラピダスが設立されるなど、一見すると半導体ブームに沸いているように見える。しかし、VLSIシンポジウムにおける投稿数および採択数には増加の兆しが見られない。このことから、日本の半導体産業における競争力は依然として低迷していると判断せざるを得ない。
以下では、VLSIシンポジウムにおいて投稿数および採択数ともに大きな増加を見せている中国について、その背景と要因を分析してみよう。
なぜ中国が投稿数と採択数を増大させることができたのか
図6には、中国のVLSIシンポジウムにおける投稿数および採択数の推移と、中国半導体産業における主な出来事を示している。
中国は世界の半導体需要の約3分の1を占めているが、その内製率は10%台と極めて低い状況にあった。このため、中国における貿易赤字の主因は石油ではなく、半導体であると指摘されていた。