
お隣の韓国で、李在明(イ・ジェミョン)新大統領の「革命政権」の幕開けである――。
李在明新大統領は6月4日昼、ソウル漢江(ハンガン)の中州にある汝矣島(ヨイド)の国会議事堂で宣誓を行い、その後、約16分にわたって大統領就任演説を行った。私はインターネットの生放送でその模様を見たが、まさに韓国の時代が一新される一断面を目の当たりにした。
まず大統領就任演説のタイトルは、「就任宣誓後、国民に申し上げるお言葉」とされた。そこには、「国民を第一に考えている」という李大統領のメッセージが込められていた。
作り笑いの中の鋭い眼光
李新大統領が壇上のマイクの前に立つと、議場内に一斉に拍手が起こった。ところが李大統領は、まずは意外な言葉を口にした。
「野党の皆さんの拍手がないですね。誤解があるようだ……」
そう言って、向かって左下の、この日から「野党」に転落した「国民の力」の108人の議員たちの方を見た。だが、テレビカメラがアップした丸い銀縁メガネをかけた顔は、作り笑いを浮かべながらも、鋭い眼光だった。

実は私も、大統領選終盤の5月25日、ソウルで大統領選を取材中に、「共に民主党」本部で李在明候補を直撃した時、この「作り笑いと鋭い眼光」を浴びた。私は名刺を渡して、「大統領になったら日韓関係をどう進展させていくつもりですか?」と質問したのだが、返ってきたのは「作り笑いと鋭い眼光」だけだった。
そもそも、今回(6月3日)臨時の大統領選挙が行われたのは、昨年12月3日深夜の「戒厳令宣言」によって、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が今年4月4日に罷免されたからだ。尹大統領は任期を約2年残して、涙の退陣となった。
そして、なぜ尹大統領が突然、戒厳令を発令したかと言えば、昨年4月10日の総選挙で、野党「共に民主党」に175議席(全300議席)を取られ、国会が空転したからだ。そのため、野党となった「国民の力」は、李在明氏による「自作自演」の政変劇だと批判してきた。
ともあれ、「勝てば官軍、負ければ賊軍」である。李在明新大統領は演説で、こう力説した。
「国民が託した銃剣で、国民主権を奪った内乱は、いまや二度と再発させてはならない。徹底した真相究明によって、しかるべき責任追及を行い、再発防止策を確固として講じていく」