
(川上 敬太郎:ワークスタイル研究家)
初任給30万円ブームの到来
ソニーグループがボーナスの一部を廃止し、その分を月給に上乗せする形で給与体系を見直したことが話題となっています。他にもバンダイや大和ハウス工業といった名だたる会社が同様の取り組みを進めていると報道されており、一つの潮流を形成しつつあるようです。
このような動きは「賞与の給与化」と呼ばれていますが、賞与も臨時に支払われる給与の一種であることを考えると、「賞与の月給化」と言い換えた方が実態をイメージしやすいかもしれません。
この賞与の月給化に対する受け止めはさまざまです。「生計が立てやすくなる」と歓迎する声もあれば、「ボーナスという楽しみがなくなるのは寂しい」と残念がる声も見られます。
ただ、賞与の月給化だけでなく、会社が年俸制を導入したり、退職金を前払いする形で月給に上乗せしたりといった取り組みは以前からあったことです。いま改めて注目を集める要因の一つは、月給引き上げの動きが“初任給30万円ブーム”と連動していることにあります。
新卒採用市場における競争が激化する中で、各社は初任給の大幅な引き上げを打ち出し、月給30万円を超えるケースがいくつも見られるようになってきました。社会人経験のない新卒学生が求人を探す際に、月給の高い会社に目が向くのは自然なことです。では、賞与の月給化は、社員たちにとって望ましい取り組みと受け止めて良いのでしょうか。
月給額の数字は大きいほどインパクトがあり、目を奪われるものです。しかしながら、月給が高くなっても社員が不利益を被る可能性があるケースが少なくとも3つあります。分かりやすくなるよう、ポイントを強調したモデルを用いながら説明したいと思います。
