カカオは気候変動などで生産量が激減(写真:ロイター/アフロ)

アフリカを主産地とするカカオ豆の価格が高騰し、国内でもチョコレートの値上がりが目立つ。4月の消費者物価指数で、チョコの値上がりは前年同月比で31%に達した。主産地でカカオの生産量を減らした主因は天候異変だが、それとは別の見逃せない問題がある。金価格の高騰で違法採掘が増え、農地の買収や環境破壊が広がっていることだ。

(志田 富雄:経済コラムニスト)

わずか2年で4〜5倍の水準まで急騰

 チョコレートの原料になるカカオ豆は米国の先物市場で取引されている。貿易商品だけに歴史は古い。1925年に発足したニューヨーク・ココア取引所がコーヒーや砂糖を売買する取引所と合併し、1979年にニューヨーク・コーヒー砂糖ココア取引所(CSCE)が設立された。その後も取引所の再編が進み、現在では米コンチネンタル取引所(ICE)グループに統合されている。

 2022年まで1トン2000〜3000ドルで推移していたカカオ豆先物相場は23年から上昇を始め、24年には一気に1万ドルを超す史上最高値まで噴き上げた。現在はやや落ち着いたものの、それでも9000ドル台という高水準にある。

 主因は異常気象で西アフリカ産地の生産量が大幅に減少したことだ。太平洋赤道域の海水温が上昇するエルニーニョ現象の影響とみられる。国際ココア機関(ICCO)によれば、23〜24年度の世界生産量は448万9000トンと前年度に比べて11%減少した。世界生産の7割強を占めるアフリカの生産が14%近く落ちたことが響いた。

 24〜25年度の生産量は持ち直す見通しだが、484万トンと500万トンをこえた22〜23年度の水準には届かない。日本貿易振興会(JETRO)の情報によれば、世界最大のカカオ豆生産国であるコートジボワールは2024〜25収穫年度(24年10月〜25年9月)のミッドクロップ(4〜9月)の生産者買い上げ保証価格を過去最高となる1キログラム当たり2200CFAフラン(約550円、1CFAフラン=約0.25円)に設定したと発表した。

 コートジボワール産のカカオ豆は、同国より高値で取引されるブルキナファソやギニア、リベリアといった近隣諸国へ違法に流出している。監視システムの強化もほとんど効果が出ていないという。

 カカオ豆の生産者は零細な家族経営が多く、以前から児童労働などの問題が指摘されている。コートジボワール政府が買い上げ価格を引き上げたり、社会福祉を充実させたりしているのは生産環境を改善する目的がある。

 アフリカのカカオ豆産地はもう一つ、厄介な問題に直面している。価格高騰が金の違法採掘を広げていることだ。