
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
米大リーグ、ドジャースの佐々木朗希投手が、右肩の関節付近に痛みが生じるインピンジメント症候群のため、15日間の負傷者リスト(IL)入りした。日本時代の昨季にも同じ症状があったことや、直近2試合は痛みを抱えて登板していたことも明らかになった。一般的に投手の肩は肘よりも複雑な構造のため、復帰にも慎重な判断が求められる。
球団の起用法や、痛みを感じた時点での報告が遅れた佐々木投手の対応に、それぞれ問題はなかったか。日本メディアの担当記者らの意見も真っ二つに割れる。今季開幕から、まだ2カ月。海を渡った23歳の「令和の怪物」は、なぜ戦線離脱へと追い込まれたのか。
インピンジメント症候群とは
「悔しいですし、離脱してしまって申し訳ない」
佐々木投手はIL入りの発表を受けて、苦しい胸中をこう打ち明けている。
インピンジメント症候群は、肩関節付近に痛みが出る症状だ。日本スポーツ協会のスポーツドクターである整形外科医の安間久芳氏によれば、「インピンジメントとは『衝突』の意味で、今回報道されたインピンジメント症候群とは、投球時などに上腕骨頭が肩甲骨の一部や周囲組織と衝突や摩擦を起こし、そこに腱板などが挟まって痛みを生じた状態である。軽い場合には少し休むだけで症状が回復することもあるが、重症の場合は手術にいたるケースもある」と話す。
投手だけでなく、サーブを打つテニスプレーヤーや、アタックを打つバレーボール選手などにも発症しやすく、佐々木投手のチームメートのマイケル・コペック投手も今季、同じ理由で開幕から60日間のILに入っている。
安間氏によれば、発症の原因には、肩関節自体の不安定性などのほか、上半身の肩甲骨や胸椎、さらには下半身の股関節の可動域低下などが影響することもあり、全身運動である投球動作では、肩から離れた部位の動きのかたさをかばうことで、肩に負担が生じているケースもあるという。
佐々木投手は今回、昨季のロッテ時代にも同様の症状で離脱していたことが判明した。