トランプ氏の仲介で果たしてウクライナ戦争は全面停戦となるのか(写真:AP/アフロ)

 米大統領2期目の就任以来100日が過ぎ、「助走期間」を終えたトランプ氏。来年の中間選挙を見据え、派手な実績を作らなければと、焦りさえ感じる。

「大統領に就任すれば1日で実現だ」と豪語した、ウクライナ侵略戦争の停戦協定も、ロシア・プーチン大統領の「のらりくらり戦術」で、締結にはほど遠い。

 仮にトランプ氏が締結ありきで“生煮え状態”のまま停戦協定を結ばせた場合、予期せぬ力学で国際情勢が一層不安定になる可能性もある。果たして国際情勢はどう変貌しそうなのか、驚愕のシナリオ5つを予測する。

教皇フランシスコの葬儀に先立ち、聖ペトロ大聖堂の中で会談したトランプ米大統領とゼレンスキー・ウクライナ大統領(2025年4月26日、写真:Ukrainian Presidential Press Service/ロイター/アフロ)

【シナリオ①】3年以内に侵略再開か、狙うはウクライナの内陸化とモルドバ占領の“一挙両得”

 プーチン氏にとって、停戦は侵略再開のための充電期間に過ぎず、必ず侵略を再開すると見る識者が大半だ。

停戦後に再びウクライナ侵略を開始する可能性も指摘されるロシア・プーチン大統領(写真:Sergei Bobylev/Photo host agency RIA Novosti/AP/アフロ)

 侵略再開の矛先は、ウクライナ南部のヘルソン州方面が最有力で、開戦当初もこのルートに挑んだが、兵站(後方支援)の不備とウクライナ軍の猛反撃で後退を余儀なくされた。

 黒海沿岸を占領しつつ南西へ300kmほど進軍しルーマニア国境に到達。ウクライナを黒海から遮断、内陸化して、同国に経済的ダメージを与えるのが目的の1つだ。ルート上には、ウクライナ最大の積出港を擁するオデーサがあり、この都市を掌握すれば、同国の外貨獲得源である穀物の海上輸送路を阻止できる。

ウクライナ・オデーサの港(写真:ZUMA Press/アフロ)

 さらに余勢を駆って、隣接する親西欧で旧ソ連邦の一員だったモルドバに攻め入る可能性も捨て切れない。同国東部には、親露勢力が一方的に独立宣言した「沿ドニエストル共和国」があり、ロシアはこれを国家承認し、防衛のためロシア軍数千人が駐留する。

 プーチン氏にとって同胞との連絡は、いわば悲願でもある。彼らに武装蜂起を促し、モルドバ国内の混乱に乗じて攻め込み全土を制圧するというプランが想定できる。

 成功すれば、ウクライナは三方向をロシアに囲まれ、戦況はより厳しくなる。「そうなればNATO(北大西洋条約機構)が軍事介入する」との見方もあるが、可能性は限りなくゼロに近い。モルドバはウクライナ同様NATOに非加盟で、欧米が派兵する義務はない。

 またロシア軍との直接対決は第3次大戦や核戦争に直結しかねず、NATOが非加盟国のために危険を冒すとも思えない。

忍び寄るロシアの脅威に備え、ドイツから供与されたピラーニャ装甲車で武装強化を図るモルドバ軍(写真:モルドバ国防省インスタグラムより)