
(スポーツライター:酒井 政人)
400mで“日本記録超え”を果たした女子スプリンター
今年の関東インカレ、女子は日体大が総合5連覇を達成した。トラックでエースの大活躍を見せたのがフロレス・アリエ(3年)だ。
彼女はペルーと日本、イタリアとペルーにルーツを持つ両親のもと日本で生まれ育った。中学から陸上競技を始めると、静岡・東海大翔洋高2年時のインターハイ400mで6位に入っている。3年時は自分の走りを見失い、体重も増加。スランプに陥った。
日体大に進学後もしばらくは苦しんだ。入学直後にハムストリングスを肉離れしたこともあり、体重が60kgを超えた時期もあったという。しかし、8kgの減量に成功すると、才能が開花する。
昨季は自己ベストを56秒20から53秒03まで大幅短縮。関東インカレは400mを制すと、200mでも2位に入った。大ブレイクした一方で、国籍の問題で日本選手権に出られず「悔しさ」を感じたという。
今季は4月中旬に左ふくらはぎを「肉離れ」した影響で、日本学生個人選手権(100mと200m)と織田記念(100m)を「練習の一環」で出場。そして5月3日の静岡国際400mで“大記録”を叩き出す。
日本歴代2位のタイムを持つ松本奈菜子(東邦銀行)を最後の直線で抜き去り、51秒71をマーク。丹野麻美(福島大)が保持していた日本学生記録(51秒80)を20年ぶりに塗り替えると、日本記録(51秒75)を上回ったのだ。
自己ベストを一気に1秒以上も更新したフロレス。「出したというより、出ちゃったみたいな感じです」と自身の記録に驚いていた。この快走で彼女の存在が大きく報じられた。51秒71はペルー記録で、現地の新聞でもフロレスの活躍が伝えられたという。
「多くの方に『凄い』という言葉をいただきました。それをプレッシャーに感じるよりは、『自分の力にしよう』、もっと注目されるような『凄い選手になりたい』と思いました」