想定を超える驚きの発言で世界を揺るがすトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

トランプ大統領の「ガザ所有」発言が世界を驚愕させている。動向次第では中東情勢が一気に緊迫しかねないが、今のところ原油市場の関係者が気にしているのは米国の対イラン政策だ。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=70ドルから73ドルの間で推移している。水準は先週に比べて2ドルほど下落している。トランプ米大統領の言動に振り回されているため、市場のセンチメントが徐々に悪化している感がある。

 まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスは2月3日、合同閣僚監視委員会を開催し、有志8カ国が実施している自主減産(日量220万バレル)について、4月から段階的に縮小する方針を堅持することで合意した。

 OPECプラスは2022年以降、日量586万バレルの減産を実施している。

 トランプ氏は原油価格を引き下げるため大幅な増産を要請していたが、OPECプラスはこれにノーを突きつけた形だ。

 国際エネルギー機関(IEA)は「世界の原油市場は今年、供給過剰になる」と見込んでおり、原油価格の急落を避けたいOPECプラスは今後も増産に慎重な態度を取り続けることが予想される。

 ロイターによれば、OPECの1月の原油生産量は前月比5万バレル減の日量2653万バレルだ。ナイジェリアなどの減産が主な要因だ。

 サウジアラビアは主要油種アラビアン・ライトの3月のアジア向け公式価格をバレル当たり2.40ドル引き上げた。約2年ぶりの大幅値上げだ。米国が1月、ロシアの原油輸出に対して制裁を強化したことを受け、アジアの石油企業が代替として中東産原油を買い求めていることが背景にある。

 世界最大の原油供給・消費国である米国を巡る状況は流動的だ。