2025年5月18日、セイコーゴールデングランプリ、 男子100m決勝での柳田大輝 写真/アフロスポーツ

(スポーツライター:酒井 政人)

女子100mハードルで日本歴代2、3、6位の好記録

 今年のセイコーゴールデングランプリは蒸し暑さがあり、記録面では伸び悩んでいた。しかし、女子100mハードルが“重苦しい雰囲気”を一変する。日本勢が超ハイレベルの戦いを見せたのだ。

 パリ五輪代表の田中佑美(富士通)が日本歴代2位の自己ベストを0.02秒更新する12秒81で3位。4位の中島ひとみ(長谷川体育施設)が日本歴代3位の12秒85、5位の清山ちさと(いちご)が同6位の12秒89をマークした。なお日本記録保持者の福部真子(日本建設工業)は13秒12の7位だった。

 自己ベストで日本人トップに輝いた田中だが、満足はしていない。むしろ“危機感”を抱いている様子だった。

「速い選手についていって参加標準記録をという気持ちがあったので、まずは悔しいです。グ~ンとスピードが上がった中盤で少し失敗しました。でも無難にまとめてしまうタイプなので、グンとスピードが出たのは今後の記録向上につながるかなと思います」

 近年、日本の女子100mハードルはレベルが急上昇しており、最大3枠の代表をつかむのが非常にハードになっている。だからこそ、田中はいち早く東京世界陸上の参加標準記録(12秒73)を突破したいと考えている。

「年々、日本代表争いのしんどさが増しているので、参加標準記録を突破して、7月上旬の日本選手権に臨みたい。ここからは自分に集中できるかどうか選手権を開催して、自分のレースに集中したいと思います」

 田中の危機感を強くしているのが、ライバルの存在だ。そのひとりが7月に30歳を迎える中島になるだろう。昨年9月に12秒99をマークすると、今季は4月29日の織田記念を12秒93(+1.8)で優勝。今大会で自己ベストを12秒85まで短縮している。

 日本人7人目となる12秒台に突入したことで、「絶対に東京世界陸上に出場したい」という強い思いを持つようになった中島。熾烈な代表争いは、「めちゃくちゃしんどいし、考えるだけで眠れなくなる」というが、その一方で「楽しいし、本当に幸せだなと思います」とワクワク感を抱いている。

 今大会で自己ベストを更新した3人(田中、中島、清山)、日本記録保持者の福部、東京五輪代表の青木益未(七十七銀行)、12秒台の大松由季(サンドリヨン)、今季限りでの「引退」を表明している寺田明日香(ジャパンクリエイト)らによる“3枠”をめぐる激戦から目が離せない。