
今や半導体は経済安全保障の要であり、各国が自国での開発・製造に注力している。水平分業化された半導体産業において、足元ではファブレス(設計)の米エヌビディアとファウンドリー(製造)の台湾TSMCが大きくリードしているが、技術進化は早く、勢力図がいつ一変しても不思議はない。本稿では『日台の半導体産業と経済安全保障』(漆畑春彦著/展転社)から内容の一部を抜粋・再編集。世界の半導体産業と主要企業を概観するとともに、日本の半導体開発の最前線に迫る。
先端半導体の登場で、データセンターの建設ラッシュと米ハイテク大手企業による生成AI開発競争が進む現在。数字から見えてくる、その実態とは?
■ AI投資拡大に伴う先端半導体への需要増

米調査会社のガートナーは、2024年の世界のIT投資は前年比8%増の約5兆ドルとなり、同3.8%増の2023年から伸びが加速すると予測している。主にデータセンターが投資の牽引役となっている。2024年に入り、米ハイテク大手企業を中心とした生成AI向けインフラ投資、データセンター投資が急拡大している。
データセンターは、安全で高いシステムの継続稼働能力をもって、企業のインターネットサーバーやデータ通信、固定・携帯・IP電話などの装置を設置・運用することに特化した施設である。建物内には、通信事業者の光ファイバーなど大量の通信回線が引き込まれ、サーバーを収納するサーバーラック(専用棚)やキャビネット、大量データを保存するストレージ、ネットワーク機器を備えるなど、分散するIT機器を集約的に設置し、その効率的な運用を可能としている。
利用者に対し、1ラック当たりの賃貸料が定められ場所貸し形式で提供されている。企業のAI利用が拡大するなか、自社のサーバーを効率的に管理・利用すべく、充実したインフラを備えたデータセンターへの需要が世界的に高まっている。
国内でも、データセンターの建設ラッシュが続いている。調査会社IDCジャパンが2022年4月に公表した予測によれば、日本国内事業者データセンターの延床面積は2021~2026年に年平均8.2%成長し、2025年に263万400ⅿ2、2026年に390万5100ⅿ2に増加する。