(左)出所:共同通信イメージズ(右)撮影:榊水麗(左)出所:共同通信イメージズ(右)撮影:榊水麗

 1977年、業界でいち早く「オフィスオートメーション(OA)」というコンセプトを提唱したリコー。「機械ができる仕事は機械に任せて、人はもっと創造的な仕事をすべき」という考えのもと、働き手の業務効率化、生産性向上を支えてきた。そして2020年、リコー会長の山下良則氏は「OAメーカーからデジタルサービスの会社への変革」を宣言。「人を活かす経営」に取り組み、組織風土をはじめとする数多くの改革を進めてきた。2024年12月に著書『すべての"はたらく"に歓びを! リコー会長が辿り着いた「人を愛する経営」』(日経BP)を出版した山下氏に、人を活かすための環境づくりや組織風土改革の舞台裏について話を聞いた。

「社員のモチベーション」こそ企業の宝

――著書『すべての"はたらく"に歓びを! リコー会長が辿り着いた「人を愛する経営」』では、山下会長が2017年の社長就任当初から「社員がモチベーションを高く持って働き続けられる環境づくり」に注力したと述べています。なぜ社員のモチベーションを重視した環境づくりにこだわったのでしょうか。

山下良則氏(以下敬称略) 私は1980年にリコーに入社し、2017年の社長就任までの約30年間、国内外のさまざまな現場で仕事をしてきました。そこでは、たくさんの人から「仕事とは何か」「どのように仕事に取り組むべきか」を教わりました。助けていただいたからこそ今がある、まさに「人に活かされた人生だった」と思っています。

 社長に就任する3カ月前、2017年1月の就任会見で記者から「どのような会社にしたいか」と聞かれた際には、「社員がイキイキと働ける会社にしたい」と答えました。社員がイキイキと働ける会社になれば業績は必ず上がり、社員も成長できる、と考えていたからです。

 そして、会見では「企業の最大の宝は、社員のモチベーションである」ということも話し、その実現に向けてさまざまな取り組みを実践してきました。

――社員のモチベーションについて考えるようになったきっかけはあったのでしょうか。

山下 私はこれまでに何度も引っ越しをしているのですが、ある町で夏祭りの手伝いに参加した際の出来事がきっかけでした。