製造業向け機械加工部品の製造と販売をMISUMI ECサイトを中心にグローバルに展開するミスミは、特注機械部品を3Dデータだけで即時に見積もり、最短1日での出荷を実現する機械部品調達のAIプラットフォーム「meviy(メビー)」において、初回利用を促す打ち手としてYouTubeを導入。顧客の困り事に寄り添うコンテンツで好評を得て、大きな成功を収めている。社内理解の獲得から動画制作の勘所、SNS活用まで、YouTube戦略を振り返り、そのポイントをIDマーケティング推進室GoToMarketチーム・チーフディレクターの五十嵐氏に聞いた。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第15回 マーケティング&セールスフォーラム」における「特別講演:誰でもできる!製造業BtoB企業向けYouTube戦略/五十嵐公俊氏」(2024年12月に配信)をもとに制作しています。

設計者の悩みを解決する公式YouTubeチャンネル誕生の背景

「meviy(メビー)」はオンラインで3D設計データをアップロードすれば、即時に見積もり回答が得られ、発注した部品は独自のデジタル製造システムにより最短1日で出荷される機械部品調達AIプラットフォームだ。2023年に「第9回ものづくり日本大賞」で内閣総理大臣賞を受賞し、SNSやTVCMでも好調に認知獲得してきたが、ユーザーの初回利用には壁があった。

 実際のメビーの利用では、企業の設計担当者がアカウントを作り、自ら操作する。このため、活用促進には、個人に向けて使い方や運用ルールを周知する必要があった。当初はウェビナー(オンラインセミナー)を開催したものの集客数は伸び悩み、参加後のフォローや費用対効果にも課題を抱えていたという。

 一方、ウェビナーの参加者からは「見逃し配信をしてほしい」「業務時間外でも見られる動画にしてほしい」といった声が上がっていた。これに応え、2024年10月に自前で立ち上げたのが、メビーの公式YouTubeチャンネル「株式会社ミスミmeviy - メビー」だ(下図)。

 チャンネル開設時から企画・制作を手がけてきたIDマーケティング推進室GoToMarketチーム・チーフディレクターの五十嵐公俊氏は、「徹底的に見る人の気持ちに寄り添い、共感し、楽しんでもらえる動画を作ろうと考えました」と、振り返る。

 公式YouTubeチャンネルには五十嵐氏や後輩が登場し、コミカルな掛け合いをしながら、製造業の設計者の悩みを解決する。この取り組みが好評を博し、「日経クロストレンドBtoBマーケティング大賞2024」の「コンテンツ部門」で部門賞を受賞。開設後3カ月で、接触人数12.2倍、初回購入人数5倍、ROAS(Return On Advertising Spend=広告の費用対効果)は低コストでの自社制作が功を奏し、目標の20倍となった(下図)。

 もちろん、その成功の裏には周到な戦略があった。マーケティングやクリエーティブ経験のない五十嵐氏が、いわゆる「お堅い」企業であるミスミで、どのようにYouTube施策を成功に導いたのだろうか。立ち上げからこれまでを振り返り、成功のポイントを語った講演の骨子をお届けする。