出所:Abaca Press/共同通信社

 世界を混乱に陥れているトランプ政権の高関税政策。今後、米国も含む世界の自動車産業およびその関連企業はどのような影響を受けるのか? そして日本の自動車産業にはどのような対応策があるのか? シティグループ証券などで自動車産業のアナリストを長年務めてきた松島憲之氏が俯瞰(ふかん)する。

トランプ政権の高関税政策で世界がパニックに

 トランプ政権の高関税政策が世界中をパニックに陥れ、株式市場も乱高下を繰り返している。4月3日に日本車を含めた全ての輸入車に対して25%の追加関税を発動、4月5日に10%の基本関税を発動。4月9日時点では、相互関税は日本が24%、欧州連合(EU)が20%、中国が84%、ベトナムが46%、韓国が25%となっていた。相互関税率は、該当国に対する米国の貿易赤字額をその国への輸出額で割った数字をさらに2で割ることで算出された単純なものだが(中国の場合は追加関税あり)、国によって10%から50%の高関税率となった。

 これを受けて世界の株式市場は暴落、景気悪化を懸念する動きが強まった。しかしながら、トランプ政権は即座に、貿易相手国ごとに設定した上乗せ分(日本は14%)を90日間停止し交渉期間とすると表明、株式市場にも安心感が広がり株価は大幅高となった。

 一方、報復関税を打ち出した中国に対しては相互関税を125%に引き上げて厳しい対応をしている。これに対して中国も4月10日に米国産の全ての輸入品に84%の追加関税を課す報復措置を発動した。両国の関税引き上げ合戦は泥沼化している。